相続放棄と遺産分割協議の比較
- 2017/2/4
- 2019/3/26
相続放棄をしないと借金の放棄はできない
相続放棄とは、亡くなったご家族の権利や義務を、相続人が一切引き継がないとする手続きです。
人が死亡して相続するものは、預貯金などの財産や権利だけではなく、借金の返済などの義務についても、すべて引き継ぐことになります。
そこで、借金を相続したくない場合は、相続放棄をする必要があります。
相続放棄は、相続があることを知ってから、3か月以内に家庭裁判所で申し立てをする方法により行います。
相続放棄と遺産分割の違い
相続人の皆さんでの話し合い、いわゆる遺産分割協議で自分は相続しないことに決まれば、それで相続放棄をしたことになるのではないか、と思われるかもしれませんが、これは正式な相続放棄ではありません。
遺産分割協議の効力は、相続人の間では有効に認められますが、相続人以外の債権者などには効力が及ばないので注意が必要です。
これに対し、裁判所で行う相続放棄の申し立ては、裁判所によって審判がされるため、相続人以外の第三者に対してもその効力が認められることになります。
遺産分割協議で借金放棄しても無効?
つまり、遺産分割協議で「借金は全額、長男が相続する」という内容で相続人全員が合意したとしても、相続人でない債権者にはその効力は及びません。
この場合に、たとえば貸金業者が次男に対し、「亡くなったお父さんの借金、あなたの相続分を支払ってください」と催促した場合、裁判所で相続放棄の手続きをしていなければ「長男が全部相続したので…」という理由で、借金を拒むことはできないのです。
相続放棄以外の方法
借金を支払わないために、一番確実な方法は、相続放棄であることは間違いありません。
もし、何らかの事情があって、相続放棄を行う以外で、長男のみが借金を全額相続して、次男が借金の支払いを免れるためには、遺産分割協議のほかに、債権者の同意を得る必要があります。
しかし、債権者としては、借金の免責の手続きに同意してもらうということはあまり期待できず、ハードルが高いでしょう。
借金や負債があったり、知人の連帯保証をしていたりする場合は、まずは第一に相続放棄を検討してみてください。
遺産分割協議書に安易にハンコを押さないように
このように、遺産分割協議書の内容で、自分は借金も財産も相続しないという内容で合意したとしても、
借金については、債権者が認めなければその支払い義務を免れることはできません。
その結果、何も財産を相続していないのに借金は支払わなければならない、という事にもなり兼ねないのです。
亡くなったご家族に借金があるような場合は特に注意し、安易にハンコを押さないことが重要です。
借金を相続したくない場合は、相続放棄を検討してください。
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※日本司法書士連合会WEBサイトより引用